歌を歌っている人達がうらやましくなることがある。
そういう時は決まって、叫び出したくなるような衝動に駆られている時だ。
少年の頃は衝動の吐き出しどころがわからなくて、一人部屋で枕に顔を押しつけて、わあ、とも、ぎゃあ、ともいえないような奇声を発したりしていたものだ。
…今考えると、ゾッとするような少年だが、まあ、そんな悶々とした衝動を持て余すのが、青春というものでは無いだろうか。
それから時は経ち、僕もオッサンといっていい歳になってきたわけですが、困ったことにこんな歳になってもやはり、叫び出したいような衝動に駆られることは、ままあるのである。
そんな時は、衝動のままにステージで歌を歌う人達を羨ましく思いながら、けれどその衝動をぐっとお腹の下辺りに押し込む。
そうすると、その辺りでそういった衝動だったり、強い想いだったりというものがぐるぐると渦を巻き始め、ふつふつと熱を持って、やがて濾過されて、ぽとりと一滴の気力となるわけです。
その気力を持って、作品をつくります。
じっくりと叩きます。ゆっくりと削ります。
そうしていると不思議とあの衝動は、ごく静かに作品に宿る気がします。
衝動は、静かな力にもなることがあり、衝動は静けさの濃度を増すこともあるのです。
そんなことを想ったり、願ったりして、作品をつくっています。