葉月。空が日没の準備を始める頃。
蝉の声を忘れたような静かな部屋で、思っていたよりも控えめな声を合図に、赤ん坊が僕達のもとへとやってきました。
子供が産まれるという大きな変化。
それは、日々の生活や心構えを大きく変えましたが、僕が人生において持ち続けてきた想いを力ずくで変えてしまうような理不尽なものではありませんでした。
どんなに大きな出来事があったとしても、想いは劇的では無く、淡々と募っていくものなのかもしれない。
変わることも変わらないことも、降り積もり足元の土となるように。
そんな実感は、確かに彼がここにいることの証明のようで、じんわりと喜びを感じます。
これからも、作り手として目指していく景色は変わらない。
けれどその過程に、子供が自分自身の幸せを見つける手がかりがあるように。
新しい小さな想いが大切に育っていきますように。