2014年7月17日木曜日

また八王子に行きます。























それはまだ、僕が東京に住んでいた頃の話。

都心から、青梅へと引っ越した頃のことである。

青梅で始めて手に入れた愛車は「八王子ナンバー」
なんで八王子なんだよと、ぶつくさと呟やく。

その頃の僕は、実をいうと八王子が苦手だった。
青梅から少し南に下ったところにある八王子。
同じ東京の外れにあるにも関わらず、のんびりとした田舎町の青梅とは対照的に、八王子は地方都市という雰囲気で、なんだか、ギラギラしたイメージだった。

八王子ナンバーの車にも乗り馴れてきた頃、そんな行くことも無いだろうと思っていた街に、突然縁ができる。

八王子のうつわ屋さん、atelier yorimitiさんで作品を取扱っていただけることになったのだ。

始めての納品は、直接お店に伺った。
そのお店は八王子の大通りから少し外れた通りで、大きなショーウィンドーに、暖かい灯りを燈していた。
なんだかこの通り自体が僕の抱いていた八王子のイメージと随分違う。
チェーン店がギラギラと軒を連ねる駅前と違って、そこかしこから町の小さなお店の息づかいが聞こえてくる。
僕はyorimitiさんの扉を開く。

それからの八王子は暖かい想い出に溢れていた。
yorimitiさんの店内に大切に並べられた、好きの詰まったうつわ達。
企画展に遊びに来てくださった八王子の暖かい人達と過ごした時間。
お店のそばのたこ焼き屋さん。
山の中のほうとう屋さん。
…思い出すと楽しかった想い出が次から次へと溢れ出してくる。

その後、僕は東京を離れ、関西へと引っ越すことになったけれど、ふとした瞬間にその町や人のことを想い出す。

ある日僕は、左手に真新しい「神戸ナンバー」のプレート、右手にはドライバーを持っていた。
引っ越しに伴なう、車の登録変更というやつだ。

ボロボロになったネジを回し「八王子ナンバー」のプレートを外す。
プレートを眺めながら僕は呟いた。

「変えたくないなあ」

八王子は僕にとっていつの間にか大切な場所になっていた。

「また遊びに行きます」

くたびれた八王子ナンバーのプレートの奥で、いくつもの灯りが優しく揺れていた。


2014・7・19(sat) 〜 7・26(sat)
atelier yorimiti
『yuta × Reinbow Leaf  二人展』


atelier yorimitiさんは9月末をもって八王子での営業を終えます。
(半年〜1年程の休業期間の後、移転オープン)
その最後の企画展に参加させていただけることになり、心からうれしく、光栄に思います。
青梅のガラス作家さん平岩さんと共に、また八王子の皆様と楽しい時間を過ごせるのを、楽しみにしております。
是非遊びにいらしてください。